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・妊娠を機に仕事を辞めると出産手当金・育児休業給付金などがもらえなくなる
・離職後は社会保険料免除が終了し国民年金・健康保険料の支払い負担が発生する
・法律に基づき時差出勤や業務軽減などの配慮を会社に求める権利がある
・妊娠や出産を理由とする解雇や減給などの不利益な扱いは禁止されている
・産後の再就職は前職の雇用形態により難易度が大きく左右される
・体調や家計状況に加え将来のキャリアを含めた総合的な判断が必要になる
妊娠という大きなライフイベントを迎え、働き方について悩むのは当然のことです。
SNSや周囲の声を聞くと「辞めるべきではない」という意見もあれば「無理は禁物」という意見もあり、どう判断すればいいか分からなくなってしまうことはないでしょうか?
安易に退職を決めてしまうと、受け取れるはずの手当がもらえなくなったり、将来のキャリア復帰で苦労したりするリスクがあります。
一方で、心身の健康を損なってまで働き続けることが正解とも限りません。
この記事では、妊娠で仕事を辞めるという選択を検討する際の具体的な判断ポイントと、働くプレママが必ず知っておきたい支援制度の基礎について解説します。
この記事の目次
妊娠で仕事辞めるのはあり?結論と基本の考え方
妊娠を機に仕事を辞めることは、決して逃げでも間違いでもありません。
結論から言えば、ママの心身の健康と赤ちゃんの安全が最優先であり、状況によっては辞めるという選択は十分にあり得ます。
しかし、勢いで辞めてしまう前に考えたいのが、退職による経済的・キャリア的な影響です。
ここではそれぞれの選択がもたらすメリットやデメリットを整理してみましょう。
辞めるメリット・デメリット
妊娠を機に仕事を辞める場合、心身の安全を最優先できる一方で、経済的損失が発生するリスクがあります。
■身体的・精神的負担の解消
・通勤ストレスや業務負荷がなくなり、母子の安静に専念できる
・仕事への責任感や欠勤への罪悪感から解放される
■育児準備への集中
・自分のペースで通院や産後の生活基盤を整えることができる
■経済的な損失
・育児休業給付金(休業前賃金の50%〜67%相当)の受給資格を失う
・再就職時の条件が以前より下がるリスクがある
■社会保険料の自己負担が発生する
・産休・育休中の社会保険料免除が受けられない
・国民年金や国民健康保険の手続きと保険料負担が生じる
退職した場合、本来得られるはずだった給付金が得られなくなることは大きなデメリットです。
家計への長期的な影響を考慮した判断が必要といえるでしょう。
働き続けるメリット・デメリット
働き続けることを選択した場合、公的制度を利用することで金銭的なメリットを最大化できますが、体調と業務の両立という課題も残ります。
■経済的な恩恵を最大化できる
・出産手当金や育児休業給付金を受給できる
・休業中の社会保険料が全額免除される
・キャリアの継続性が保たれる
■退職によるブランクを作らずに済む
・復職後の昇給や厚生年金の加入期間において将来的なメリットがある
■体調不良時でも業務調整が必要
・職場への報告や業務の引き継ぎなど精神的な調整コストが発生する
■両立による疲弊のリスク
・体調が悪化するリスクがある
・職場の理解度によってはストレスを感じる場面も生じる
働き続ける選択をした場合、雇用を維持することで産休や育休を利用し、出産を迎えることが可能です。
配慮措置による負担軽減も含め、安易に退職せず在籍し続ける道も検討すべきといえるでしょう。
後悔しないための判断基準
後悔しないための判断基準は、体調・家計・制度・働き方の4つのポイントを客観的に整理し、総合的に判断することが重要です。
・主治医から安静を指示されているか
・現在の業務内容が医学的に見て母体に深刻なリスクを与える状態か
家計への影響
・退職による収入減と受給できるはずの手当の総額を算出
・差額を許容できるライフプランであるか
職場の制度と理解度
・時短勤務・テレワーク・業務軽減などの配慮が実際に受けられる環境にあるか
・出産後のロールモデルとなる社員が存在するか
中長期的なキャリアパス
・数年後の再就職の難易度を考慮する
・将来の年金額・生涯賃金への影響が納得できる選択となるか
一時的な体調の変化や感情だけで決めるのではなく、判断のポイントを踏まえたうえで、パートナーと相談をし、最善の道を選べるようにしましょう。
パートナーともよく話し合って決めると安心です。
妊娠で仕事を辞める前に確認したいポイント
妊娠を機に仕事を辞めるべきか、継続すべきかという悩みは、多くのプレママが直面する課題です。
仕事を辞めると決断する前に、まずは冷静に自身の状況を整理してみましょう。
ここでは、後悔しない選択をするために、3つの重要な確認ポイントを解説します。
・体調・通勤・仕事内容が妊娠に与える影響
・職場環境(マタハラ・理解度・業務調整)
・家計と収入減のシミュレーション
体調・通勤・仕事内容が妊娠に与える影響
妊娠を理由に仕事を辞めることを検討する際、最も優先すべきは母体の健康状態です。
つわりが酷い時期や切迫流産・切迫早産のリスクがある場合、仕事による身体的・精神的な負荷が妊娠継続にどのような影響を与えるかを慎重に見極める必要があります。
自身の体調だけでなく、仕事内容や通勤環境も判断材料の一つです。
長時間の立ち仕事・重労働・満員電車での長距離通勤などが、医師の指導をもとに許容できる範囲を超えているのであれば、無理に仕事を続けることは危険といえます。
今の仕事が妊娠中の身体にとってどれほどの負担になっているかを整理し、休職で対応できるのか、それとも仕事を辞めるしかない状況なのかを客観的に判断することが重要です。
職場環境(マタハラ・理解度・業務調整)
妊娠したら仕事を辞めるのが当然という空気感や、職場の理解不足が原因で離職を考えるケースも少なくありません。
継続を判断するうえでは、勤務先に妊婦を守るための業務調整の余地があるかを確認することが不可欠です。
法律で定められた母性健康管理措置があるにもかかわらず、マタハラが発生しているような職場では、働き続けること自体が強いストレスとなります。
上司や同僚に妊娠を報告した際、業務負荷の軽減や時短勤務の相談に対して協力的な姿勢があるかを見極めましょう。
家計と収入減のシミュレーション
妊娠で仕事を辞めるという選択は、世帯収入に直結する極めて重要な家計の判断です。
在籍していれば受給できる出産手当金や育児休業給付金は、仕事を辞めることでその受給権利を失います。
産休・育休中であれば全額免除される社会保険料も、退職して国民年金や国民健康保険に切り替えれば、新たな負担が発生します。
仕事を辞めると決める前に、退職後の収入減と支出増を合算し、出産後の生活費や将来の教育資金に支障が出ないかを具体的な数値でシミュレーションしておくことが重要です。
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妊娠と仕事に関わる制度について
妊娠を機に仕事を辞めるか継続するかを判断するうえで、国が定めている公的制度の正確な理解は欠かせません。
妊娠と仕事に関わる制度は、働く妊婦の健康と雇用を守るために設計されています。
退職という決断を下す前に、妊娠と仕事に関わる制度を確認しておきましょう。
・産前産後休業の基礎知識
・育児休業と退職の決定的な違い
・妊娠中の就業配慮義務とマタハラ禁止
産前産後休業の基礎知識
産前産後休業は、出産予定日の6週間前(多胎妊娠では14週間前)から産後8週間まで取得できる制度で、労働基準法により全ての働く女性に保障されています。
休業中は健康保険から出産手当金が支給され、標準報酬日額の約3分の2が補償されます。
また、退職して健康保険の資格を失っても、退職日までに1年以上の被保険者期間があり、退職時点で支給条件を満たしていれば、退職後も出産手当金の給付を受けられます。
ただし、退職日当日に出勤していると継続給付の要件を満たさなくなるため、退職のタイミングには注意が必要です。
育児休業と退職の決定的な違い
育児休業と退職の最大の違いは、雇用関係の継続とそれに伴う給付金の受給可否にあります。
育児休業は原則として子供が1歳になるまで(状況により最長2歳まで)取得可能ですが、この制度は休業後の復職を前提としたものです。
妊娠中に仕事を辞める決断をした場合、育児休業という選択肢そのものが消滅します。
在職して育児休業を取得すれば、雇用保険から育児休業給付金が支給されますが、退職者は対象外となります。
育児休業給付金は、休業開始から180日間は賃金の67%、その後は50%が支給される手厚い制度であり、さらに休業中は社会保険料も全額免除されます。
仕事を辞めるとこれらの支援が全て受けられなくなるため、家計の安定という観点では、育休制度を活用して籍を残しておくことのメリットは大きいといえるでしょう。
妊娠中の就業配慮義務とマタハラ禁止
企業には、妊娠中の女性従業員が安全に働き続けられるよう、適切な措置を講じる就業配慮義務が課せられています。
就業配慮義務には
- 通勤ラッシュを避けるための時差出勤
- 体調に合わせた勤務時間の短縮
- 身体的負担の少ない業務への配置転換
などが含まれます。
就業配慮は、医師の指導に基づき、労働者が請求することで企業側に実施が義務付けられるものです。
さらに男女雇用機会均等法により、妊娠や出産、休業の相談などを理由とした解雇や減給、不利益な配置転換といったマタニティハラスメントは厳格に禁止されています。
もし職場の環境が厳しく仕事を辞めるしかないと感じている場合でも、まずはこれらの法的権利を行使し、業務調整が可能かどうかを会社側に確認してみましょう。
退職した場合に影響するお金・保険・手当
妊娠に伴い仕事を辞める決断をした場合、その後の収入や保険料の負担は在職中とは大きく異なります。
公的な給付金には受給条件が細かく定められており、退職のタイミングや手続きの有無によって、本来受け取れるはずの金額が変動します。
退職後の家計を守るために、失業保険や出産に関する給付、社会保険の切り替えといった金銭的な影響を具体的に把握しておきましょう。
失業手当の受給条件と妊娠時の注意点
失業手当は、原則として『働く意思と能力がありながら職に就けない人』を対象とした制度です。
妊娠を機に仕事を辞める場合、体調不良などですぐに働けない状況であれば、原則として受給することができません。
ここで重要なのが、受給期間の延長手続きです。
通常、失業手当の受給期限は離職の翌日から1年間ですが、妊娠や出産によって引き続き30日以上働けなくなった場合は、受給期間を最大4年間まで延長することができます。
延長手続きを行わずに放置すると、いざ出産後に再就職活動を始めようとした際に受給期限が切れてしまう恐れがあります。
退職後は早めにハローワークへ相談し、延長申請の手順を確認しておくことがポイントです。
出産手当金・出産育児一時金との関係
出産に関する給付金の中でも、出産手当金と出産育児一時金は、退職の有無や加入している保険によって受給の可否が分かれるため注意が必要です。
出産育児一時金は、出産にかかる費用を補助する制度で、在職中に出産する場合は加入期間の要件はありません。
一方、退職後に退職前の健康保険から受給する場合には、退職日前日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、かつ資格喪失後6か月以内の出産であることが条件となります。
出産手当金は退職日までに継続して1年以上の健康保険加入期間があることに加え、退職日に出勤していない(産前休業期間に入っている)ことが継続受給の必須条件となります。
もし退職日に出勤してしまうと、受給資格を失うという落とし穴があるため、書類上の退職日と実際の勤務日の調整が非常に重要です。
離職を検討する際は、これらの受給条件を満たせるスケジュールであるかを必ず確認してください。
社会保険の切り替え
仕事を辞めると、それまで会社が半額負担していた社会保険の仕組みから外れるため、速やかに新たな保険へ切り替える手続きが必要になります。
選択肢は主に下記の3種類です。
- 家族の扶養に入る
- 健康保険を任意継続する
- 国民健康保険に加入する
収入がない状況で仕事を辞める場合、配偶者などの扶養に入ることで保険料負担を抑える方法が一般的ですが、出産手当金などの受給額によっては、一定期間扶養に入れないケースもあります。
在職中なら産休や育休期間に全額免除されていた年金や保険料も、退職して国民年金や国民健康保険を選択した場合は、自身で納付する義務が生じます。
どの選択が最も世帯の支出を抑えられるかは、退職後の予定収入や配偶者の年収によって異なるため、事前に家計のシミュレーションを行っておくことが重要です。
妊娠で退職した後の働き方とキャリア形成
妊娠を機に一度仕事を辞める選択をしたとしても、それはキャリアの終わりを意味するものではありません。
しかし、出産後の再就職には、育児との両立という新たな課題が伴います。
退職後の生活設計を立てる際には、将来の復職タイミングや理想の働き方を視野に入れ、あらかじめ準備を整えておくことがポイントです。
産後の再就職・復職のリアル
厚生労働省が発表した『出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業』では、産後の再就職・復職について、以下のような結果が報告されています。



画像出典:出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業(平成26年度厚生労働省委託調査)|厚生労働省
この調査結果では、再就職の成否は前職の雇用形態に左右されていることがわかります。
正社員経験者は約7割が希望通り再就職できる一方、非正社員から正社員を目指しても実現できるのは5%未満にすぎません。
非正社員層は正社員を希望しても叶わず、結局はパートや契約社員を選ばざるを得ないのが現状です。
妊娠で仕事を辞めた後の再就職は、想像以上に時間の制約を受けやすくなります。
産後は以前のようにフルタイムで働くことが困難になることも視野に入れておきましょう。
在宅・短時間勤務など柔軟な働き方
近年では、子育てと仕事を両立させるための選択肢として、在宅ワークや短時間勤務への注目が高まっています。
通勤時間を削減できる在宅勤務は、家事や育児の時間を確保しやすく、精神的なゆとりを持ちながらキャリアを継続できる有力な手段です。
退職後にフリーランスとして働く方法や、子育て支援に理解のある企業への転職を目指す人も増えています。
ただし、柔軟な働き方を実現するためには、特定の専門スキルを磨いたり、求人市場の動向を把握したりする努力も必要です。
仕事を辞める段階で、将来どのような雇用形態であれば無理なく働けるのか、選択肢を広げておくことがポイントになります。
退職前に準備しておきたいこと
妊娠を機に仕事を辞める判断をする前に、手当の受給条件や家計の収支状況を徹底的に整理しておきましょう。
一度離職して受給資格を失うと、後から修正することは不可能です。
自身が受け取れるはずの失業保険の延長手続きや、出産に関連する給付金の条件を漏れなく確認してください。
将来の働き方についてパートナーや家族と意見を共有しておくことも欠かせません。
家事育児の分担や、復職時の協力体制を明確にしておくことで、退職後の不安を軽減できます。
妊娠で仕事を辞めることに関するよくある質問
妊娠を機に仕事を辞める選択には、制度や金銭面での不安が多いものです。
ここではよくある質問をピックアップしてご紹介します。
Q・妊娠中に退職すると産休や育休は使えなくなる?
産前産後休業や育児休業は、会社への在職を前提とした制度です。
妊娠中に仕事を辞める場合、原則としてこれらの休業制度は利用できません。
休業期間中に支給される出産手当金や育児休業給付金の受給権利も失います。
退職日は給付可否を左右する重要な境界線となるため、制度を優先するならば離職時期を慎重に調整する必要があるでしょう。
Q・妊娠で仕事を辞めても失業手当はもらえる?
失業手当は、離職後すぐに働ける状態であることを受給条件としています。
妊娠や出産により即座に再就職できない場合は、原則として手当を受け取れません。
ただし、ハローワークで受給期間の延長手続きを行えば、出産後に就職活動を再開できる時期まで受給権利を最大4年間保持できます。
退職後は速やかに申請を行い、将来の再就職に備えることが重要です。
Q・妊娠中に退職すると健康保険や年金はどうなる?
仕事を辞めると社会保険の資格を失うため、新たな保険への切り替えが必須です。
配偶者の扶養に入る・国民健康保険および国民年金へ自身で加入するのが一般的な選択肢となるでしょう。
在職中と異なり、産休や育休に伴う保険料免除の仕組みは適用されませんので、世帯収入や今後の受給予定金額を考慮し、最も負担の少ない手続きを選択する必要があります。
Q・妊娠で仕事を辞めると再就職は難しい?
出産後の再就職は可能ですが、育児との両立により勤務時間や条件面に制約が生じることは否めません。
特に正社員への復帰を目指す場合、離職期間や前職の雇用形態によって難易度は変わります。
自身のスキルを整理し、在宅ワーク・時短勤務などの柔軟な働き方も視野に入れ、長期的な視点でキャリアを再構築する準備が求められるでしょう。
まとめ
妊娠を機に仕事を辞めるかどうかは、体調や職場環境、家計状況、将来の働き方などを総合的に考えて判断することが大切です。
退職を選ぶことで心身の負担を軽減できる一方、育児休業給付金や社会保険料免除などの制度が利用できなくなるなど、経済面への影響も小さくありません。
後悔しないためには、公的制度の内容や受給条件を正しく理解し、退職した場合の収入や支出の変化を事前にシミュレーションしておくことが重要です。
また、出産後の働き方や再就職の可能性についても見据え、パートナーや家族とよく話し合いながら、自分にとって無理のない選択をしていきましょう。
妊娠中の働き方に正解はありません。
大切なのは、母体の健康と赤ちゃんの安全を第一に、納得できる判断をすることです。
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